「パラサイト」しているのはどっちだ?」 田中ひかる(『アナキズム』第29号、2022年8月1日)7頁掲載。
先日、ABEMA Prime(https://times.abema.tv/articles/-/10030289)というインターネットテレビのアナーキズム特集に出演した。そこでレギュラーの出演者から次のような発言があった。「行政サービスやインフラを利用するなら、それはアナーキズムではないのではないか」「それはアナーキストが国家にパラサイトしているということではないのか」。しかし結論を先に言えば、これは逆である。「パラサイト」しているのは、私たちではない。国家と資本である。
パンデミックという状況で明らかになったのは、この世の富を作り出し、世界を豊かにし、社会に平穏と秩序をもたらしているのは、国家と資本ではない、ということである。では誰なのか。それは富も権力もない、名もない人びとである。彼らによる見返りを求めない相互扶助こそがこの世の富の源泉である。国家と資本は、これらの人びとが過去から現在に至るまでに創り出してきた共有財産に寄生し、収奪し、そして占有してきたのだ。
ところが、私たちは、いつの間にか、国家と資本に依存し、それらがないと生きていけない、あるいは、どれぐらい国家や資本に依存しないで生きることができるか、などということばかり考えるようになっている。だから「国家にパラサイトしたらアナーキズムではない」などと言われたときに、一瞬言葉を失ってしまうのだ。しかしこんなうそ八百を信じてはいけない。国家と資本こそが、地球環境と私たちの社会生活にパラサイトする寄生虫でありがん細胞なのである。
そもそも「パラサイト」という言葉は、富と権力がある人びとが、そのようなものを持ち合わせていない人びとの自信を喪失させ、黙らせた上で服従させるための言葉である。いまこそ、富と権力がない人びとが、権力者たちの化けの皮を剥がすために、「パラサイト」という言葉を彼らに対して使うときなのである。私たちに「パラサイト」しているのはそっちだ、と。
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