2019年7月15日月曜日

乱狡太郎「偽書アナキズム・栗原本 その1(1)」 Fake Anarchism Book by Kurihara Yasushi: Part 1(1)


 本書『アナキズム 一丸となってバラバラに生きろ』で万が一にもアナーキズムを知ろうと入門書代わりにすることはやめた方が良いな。これは、アナーキズムとはまったく無縁な本、アナーキズムを標榜しながら別の世界へ誘導していく偽書やから。 
 たしかに、大杉栄と伊藤野枝を中心にクロポトキンやプルードン、エマ・ゴールドマンなど有名どころのアナーキストの名前があり、「エコ・アナキズム」「アナルコ・キャピタリズム」「アナルコ・サンディカリズム」、「アナルコ・フェミニズム」「アナルコ・コミュニズム」などと題される理論や批判めいた記述があるが、それはアナーキズムが著者栗原によって擬態として用いているだけや。なんで、以下に偽書の正体を明らかにしたい。

【擬態】ぎたい mimicry; mimesis
動物が,周囲の事物やほかの動物によく似た形態をもっていること。敵の攻撃を避けるのに役立つと思われる。小枝に似た尺取虫やナナフシ,木の葉に似たコノハチョウなど昆虫にその例が多い。またアリに似たクモや花びらに似たカマキリなどのように,攻撃に役立つと思われる擬態もある。(ブリタニカ国際大百科事典小項目より)

(1)表紙に現れる偽書性
 この本を手にした瞬間、その表紙に海老ぞったわ。いつも真っ赤な岩波新書が黒になっていたからでも、春画の局部隠しの銀色に太ゴチで「人生は爆弾である正しさをぶちこわせ!」の惹句が踊っていたからではない、サブタイの「一丸となってバラバラに生きろ」にである。何が「一丸となって」やねん。大日本帝国の標語「打って一丸防諜強化」とか、あるいは会社の企業方針なんかの「社員一同一丸となって頑張る」とか、団体競技スポーツではまいどの「チーム一丸となって日本一を目指す」など、いずれにしても個人より集団の凝集性を表現する言葉や、こんなんまずアナーキズムちゃうやろと、俺みたいな組織、集団ぎらいはじんましんが出る言葉やちゅうねん。
ついでに言うとくと「人生は爆弾…」ってわけわかんないコピー、俺なら、手当たり次第に積み上げた本の上にそっと置いた檸檬の写真か絵にしてるけどな、まっそれは余談や。
 とにかく、これはアナーキズムやないわ、うさん臭い感じがプンプンや。俺、アナーキズムなんやかんや言うてディスってるときもあるけど好きや、せやからこいつ次々と一見アナーキズム風の本書いとるから興味もってもええんやけど、ちらっと顔見ただけで、こりゃちゃうなあって手を伸ばさんかったんや、人を見た目で判断するんかいなと言われそうやけど、そりゃそうやで、俺は、基本他人は苦手や、誰彼無しに付き合う気もない。それでも人と関係せなあかん時がある。その時見極めなアカン、ヘタしたらえらい目にあうからな、そんなんでこいつは外しとったんや。でもふとしたことでこの本は読むはめになってもた(その1(2)につづく)。

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