2020年4月18日土曜日

「危機」は「協力」をつくり出すのか 5:レベッカ・ソルニット、島月園子訳『災害ユートピア』(亜紀書房、2011年)

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 コロラド大学の自然災害センターを率いる災害社会学者キャスリーン・ティアニーは、カリフォルニア大学バークレー校で、1906年の地震の100周年記念に講演を行い、聴衆を虜にした。
 その中で彼女は、「エリートは、自分たちの正統性に対する挑戦である社会秩序の混乱を恐れる」と主張した。彼女はそれを「エリートパニック」と呼び、パニックに陥る市民と英雄的な少数派という一般的なイメージをくつがえした。
 エリートパニックの中身は「社会的混乱に対する恐怖、貧乏人やマイノリティや移民に対する恐怖、火事場泥棒や窃盗に対する強迫観念、すぐに致死的手段に訴える性向、うわさをもとに起こすアクション」だ。
 要するに、間違いを起こす人は少数で、いざというときにはうまく対処できるのが多数派なのだ。その少数派が見苦しい振る舞いをするのは、事実ではなく思い込みがそうさせている。彼らは自分たち以外の人々はパニックになるか、暴徒になるか、家主と店子の関係をひっくり返そうとしていると信じ、恐怖に駆られて、彼らの想像の中にのみ存在している何かを防ごうとし、行動にでる。・・・
 「メディアは市民の無法ぶりとより厳しい社会管理の必要性を強調するが、それらは災害管理における軍の役割の拡大を求める政治論をうながし、強固にする。そのような政治的立場は、合衆国では、イデオロギーとしての軍国主義の台頭を示唆する」
・・・
 数十年に及ぶ念入りな調査から、大半の災害学者が、災害においては市民社会が勝利を収め、公的機関が過ちを犯すという世界観を描くに至った。彼らはクロポトキンのようなアナキストたちが長年提唱してきた説の大部分を、静かに承認した。

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